地球科学
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高知県三宝山地域の地質とトリアス紀六射サンゴ化石を含む石灰岩
奥田 尚江崎 洋一八尾 昭
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2005 年 59 巻 6 号 p. 371-382

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抄録

高知市東方の三宝山地城では,仏像構造線を境にして,北西側に秩父帯の三宝山コンプレックス(新称)と大谷コンプレックス(新称),南東側に四万十帯の新宮コンプレックス(新称)が分布する.産出する放散虫化石が示す年代から,三宝山コンプレックスはジュラ紀新世後期,大谷コンプレックスは白亜紀古世前期に形成された地質体である.三宝山コンプレックスは,基質をなす剪断された泥岩中に緑色岩類・石灰岩・チャートのレンズ状・ブロック状岩体を含む.三宝山南方のドライブウェイの露頭では,緑色岩類のみかけ上,上位に灰白色石灰岩が分布する.また,みかけ上,下位の緑色岩類中に暗灰色石灰岩礫が含まれる.暗灰色石灰岩から4属4種,灰白色石灰岩から3属3種の六射サンゴ化石が産出する.前者はイタリアの南チロルやギリシャのHydra島,米国NevadaのNew PassなどのLadinianからCarinanの石灰岩から産出する種に,後者の六射サンゴ化石はオーストリアの北アルプスやユーゴスラビアのJulian AlpsのNorianからRhaetianの石灰岩から産出する種に似ている.以上のことから,三宝山コンプレックスに含まれる暗灰色石灰岩は.パンサラッサ海に形成された火山島の周縁でLadinianからCarnianに形成された.その後,灰白色石灰岩がNorianからRhaetianに形成されたと考えられる.

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© 2005 地学団体研究会
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