地球科学
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和歌山県中西部の日高川帯の地質 - 紀伊半島四万十累帯の研究(その13) -
紀州四万十帯団体研究グループ
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2006 年 60 巻 5 号 p. 355-374

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抄録

和歌山県中西部の四万十累帯日高川帯は,美山層M_4ユニット,竜神層および丹生ノ川層からなり,これらの各層は東西走向,北傾斜の逆断層で区切られて,東西方向に帯状に延びる.3層ともに後期カンパニアンのAmphypindax tylotus間隔帯の放散虫化石を産する.美山層M_4ユニットは砂岩優勢の付加コンプレックスであり,美山層の時代的には最上位,構造的には最下位の構造層序ユニットにあたる.調査地域の中央部に広く分布する竜神層は,構造的下位から,砂岩頁岩破断(Rl)ユニット,緑色岩-頁岩(Rm)ユニットおよび凝灰岩-頁岩(Ru)ユニットの3つの構造層序ユニットからなる.竜神層は海洋プレート層序が復元されることから,頁岩優勢の付加コンプレックスであるが,最下部のRlユニットをのぞき,変形が弱く,初生的層序がよく保存されているのが特徴である.最南部に分布する丹生ノ川層は,砕屑岩のみからなり,整然相を示す.竜神層のRmユニットに含まれる,比較的連続性のよい緑色岩類は,海洋プレートあるいは海山に直接由来するが,美山層M_4ユニットおよび竜神層Ruユニットの小規模で散在する緑色岩類は,再堆積岩体と考えられる.変形が弱く,層序関係を保存する竜神付加コンプレックスは,比較的浅所での付加作用の結果であると推測される.

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© 2006 地学団体研究会
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