地球科学
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北上山地,五葉山岩体に見いだされたアダカイト質岩の地質学的,岩石学的特徴
西岡 芳晴
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2007 年 61 巻 1 号 p. 21-31

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抄録

北上山地の五葉山岩体は北上V帯(片田1974)に属し,これまでに吉浜型,黒岩型,大窪山型に区分されていた.今回,あらたに全域の再調査を行い,大窪山型を再定義する一方,斑れい岩相を識別した.大窪山型は従来とは大きく異なり東西に伸びる帯状に分布することが明らかとなった.大窪山型には吉浜型との境界部付近において急冷相が認められ,大窪山型は吉浜型より後に貫入したと考えられる.一方で,境界部付近の吉浜型が,大窪山型に向かって系統的に帯磁率を増加させることなどから,大窪山型が貫入した時点では吉浜型は完全に固結していなかったと推定できる.吉浜型と大窪山型は岩石名としては花崗閃緑岩ないしトーナル岩であり大きな違いはないが,大窪山型がより斜長石を多く含むなど,モード組成上の相違がある.また,モード組成の特徴と対応して,大窪山型はNa2O, Al2O3, P2O_5に富み,K_2Oに乏しく,SiO2組成変化図では吉浜型とは異なるトレンドにプロットされる.さらに微量元素ではSrに富み,Rb, Zr, Yに乏しい.これらの特徴は北上II帯の岩体と一致し,大窪山型はTsuchiya and Kanisawa (1994)のhigh-Sr seriesに相当し,アダカイト質岩であるといえる.それらの成因としては,アダカイト質岩の高いSr/Y比や,アダカイト質岩と非アダカイト質岩が密接に伴うことを説明できるスラブメルティングに基づくモデルが妥当であると考えられる.

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© 2007 地学団体研究会
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