地球科学
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キルギス北部天山ザイール山脈オロバシ地域の蛇紋岩体中産するエクロジャイト
オロズバエフ ルスタムバキロフ アパス高須 晃田切 美智雄サキエフ カドルベク
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2010 年 64 巻 3 号 p. 117-126

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抄録

キルギス北部天山ザイール山脈オロバシ地域の蛇紋岩体中にブロック状にエクロジャイトを産する.この蛇紋岩体はエクロジャイトのほか,ざくろ石岩,ざくろ石角閃岩と片麻岩類のブロックを包有している.エクロジャイトの基質部では,ざくろ石,単斜輝石(ひすい輝石成分は最大18mol.%),ルチルおよび石英が共存し,エクロジャイト相のピーク変成ステージ(T=600-650℃,P>12-13kbar)を示す.ざくろ石中の包有鉱物は,形成時期の異なる2つの鉱物群に区分される.第一はエクロジャイトを形成した高圧型変成作用以前の変成イベントと考えられる高温型変成作用時に形成された鉱物群(〜角閃岩相),第二は高圧型変成作用の昇温期変成ステージの鉱物群である.エクロジャイトのざくろ石および単斜輝石の一部はマグネシオ・ホルンブレンド,斜長石などの鉱物に分解され,これらの鉱物群は角閃岩相の降温期変成作用を示す.さらに基質に形成されている半自形〜自形のマグネシオ・ホルンブレンドがエクロジャイト・ステージのざくろ石,単斜輝石およびルチルを包有していることから,エクロジャイト相変成作用後にマグネシオ・ホルンブレンドを形成する昇温変成作用が存在したと考えられる.オロバシ地域のエクロジャイトのこのような変成作用の履歴は,産状は異なるものの,約30km北東のアクチュツ地域の片麻岩類中にレンズ状岩体として産するエクロジャイトから推定された変成履歴と類似している.

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© 2010 地学団体研究会
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