2011 年 65 巻 2 号 p. 49-61
大阪府北部,北摂山地の川久保渓谷中流に分布する緑色岩類について,産状,化学組成,年代および地帯境界の再検討を行い次のような結果を得た.ペルム紀新世の超丹波帯高槻層の下位で断層で接し,かつてトリアス紀中・新世本山寺コンプレックスに属するとされた緑色岩類は,その産状から高槻層基底部でペルム紀新世に噴出した現地性のものである.また,この緑色岩とその直下の丹波帯皿型地層群本山寺コンプレックスに含まれるペルム紀中世後期〜新世のチャートに伴う緑色岩の地球化学組成の特徴は,両者とも島弧(火山弧)で形成された玄武岩に類似し,年代と地球科学的判別図による形成場に共通性がある.一方,この両者は海山や海嶺を起源とする丹波帯I型・II型地層群の緑色岩とは,地球化学的判別図による形成場おいて異なっている.これらの結果と調査地域の断層岩と岩相の特徴から,超丹波帯と丹波帯の地帯境界および高槻層を再定義した.