地球科学
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珪藻化石群集に基づく阿蘇カルデラ北部の最終氷期以降の水域環境
打越山 詩子長谷 義隆
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2011 年 65 巻 2 号 p. 63-79

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抄録

阿蘇カルデラは阿蘇4火砕流の噴出後にできた巨大な陥没地であり,中央火口丘群の中岳は今も活動している.カルデラの北部低地は阿蘇谷とよばれ,湖,河川,沼沢池および扇状地の堆積物が分布する.本研究では阿蘇カルデラ北部の9地点において珪藻化石群集解析を行い,その結果をもとに最終氷期以降の水域環境の変遷を復元した.最終氷期後期,阿蘇谷の西部では粗い砂や礫からなる河川の環境であったと推定される.その後,宝泉橋では約21,000年前から約8,800年前まで,狩尾では約8,200年前まで,千町牟田では約7,900年前まで,コア試料の珪藻群集は浮遊性のAuracoseira,CyclotellaおよびStephanodiscusが卓越し,湖の存在が示された.その後,湖は縮小,消滅し,この地域では現在と同様の河川,沼沢池に変化したと思われる.河川・沼沢池の堆積物は付着性のFragilaria,SynedraやCocconeisおよび底生のNavicula,Gomphonema,NitzchiaやNeidiumを主とした珪藻群集を含む.なお,阿蘇谷の東部では最終氷期の後期から今日まで扇状地が存在し,珪藻群集は付着性,底生であり,この間その地域は湖にはならなかった.主に風成層からなる外輪山上でも付着性,底生の珪藻群集が認められ,河川あるいは沼沢池の存在が示された.象ヶ鼻北方での小さな池の形成はほぼ1,000年前であった.

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© 2011 地学団体研究会
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