2013 年 67 巻 5 号 p. 161-168
那珂川上流,五ヶ山地域の早良花崗岩中には,金探鉱跡(大野金探鉱跡,大川内金探鉱跡)が存在する.金探鉱跡周辺の花崗岩は熱水変質作用を被っている.この熱水変質は,イライトと黄鉄鉱の出現によって特徴付けられる.変質作用の最高温度は,流体包有物の分析から230〜280℃と見積もられている.花崗岩の冷却史と熱水変質作用の時期を明らかにするため,フィッショントラック(FT)年代測定を試みた.ジルコンFT年代とアパタイトFT年代は,それぞれ,83.1〜62.0Maと18.2〜3.8Maである.これらのFT年代とこれまでに報告されているRb-Sr年代をもとに,本地域の花崗岩の冷却史を検討した.変質帯から得られた若いアパタイトFT年代(6.3〜3.8Ma)は,中新世〜鮮新世に熱水活動が起こったことを示唆する.