地球科学
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Print ISSN : 0366-6611
原著論文
秩父堆積盆地の地史と関東山地の隆起
岡野 裕一秩父盆地団体研究グループ
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2018 年 72 巻 2 号 p. 143-152

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抄録

秩父盆地団体研究グループのこれまでの研究成果と小川町総会シンポジウムでの討論の結果をもとに,秩父堆積盆地の発生~発展~消滅期の地史をまとめ,堆積域と後背地の隆起・変遷を考察し,さらに関東山地地域の隆起について検討した.

秩父堆積盆地の発生期には,断層活動による小陥没が生じ,それらが結合して大きな沈降域へと発展した.最下部層の地質年代は18-17 Ma であり,秩父堆積盆地の発生は前期中新世末である.16 Ma 頃には部分不整合が形成されており,堆積が進行する一方で,堆積域・後背地の一部で隆起が生じた.この後,急激に海底面深度が深くなった.

堆積盆地発展期にあたる小鹿野町層群堆積期には海進が一層すすみ,砂岩泥岩互層を主体とするタービダイトが堆積したが,その後期には海退がはじまった.さらに,上位の秩父町層群の堆積時には堆積盆地の環境は浅い海へと変化した.この時期には周囲から堆積物の供給がみられることから,後背山地地域の隆起が想定される.

秩父堆積盆地消滅期にあたる最上部層は粗粒な岩相のものが多い.堆積盆地の消滅は,15-14 Ma と推定される.堆積盆地消滅後,地塊化をともなった関東山地の隆起運動は一層進行している.秩父堆積盆地の周辺地域における深成岩の活動や陸上火山活動と,堆積盆地域における海域の消滅,消滅後の隆起の時期は対応しているようにみえる.とりわけ,堆積盆地周辺部にみられる深成岩の活動は,地殻の上昇などをもたらし,地塊化をともなった関東山地地域の隆起運動の原因になったのではないかと推定される.

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© 2018 地学団体研究会
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