2019 年 73 巻 1 号 p. 35-45
北海道の先住民であるアイヌの伝承から地質学的現象の推測を試みた.
北海道には道北部,道東部および道南部に多くの火山が分布する.ところが,江戸時代以前は和人が常住しなかったため,道南部の一部を除き,噴火についての文書記録は無い.しかし,長い間北海道で暮らしてきたアイヌには,火山についてのダイナミックな伝説が各地にたくさん残っている.中には過去の噴火活動推定のヒントになるものもあると思われる.
国土地理院の地形図にはオプタテシケ山が示されているが,アイヌの伝説にあるオプタテシケという名称の意味やその地形的位置については定説がない.本論では,伝説上のオプタテシケ山の名称やその位置に関して考察をおこない,泥流災害の起きた場所と時期を考察した.