東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
ギラヴァンツは北九州に何をもたらすのか-第10 回-:入場者数最下位からの挽回に向けて
南 博
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2014 年 25 巻 1 号 p. 49-52

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抄録

 ギラヴァンツ北九州にとってJ リーグ加盟5 年目となるシーズンが2014 年3 月2 日に開幕した。昨シーズンは柱谷幸一監督のもと,中期的視点から若い選手らを育てていく姿勢で戦った。その結果,前半戦の成績は極めて厳しい状況であったものの,チーム内に戦術が浸透し始めた夏場からは勝率が高まって順位を少しずつ上げ,最終的には,J2 の22 クラブ中16 位(13 勝10 分19 敗)でシーズンを終えた。選手が大幅に入れ替わり,また予算面でも厳しい制約がある中で,チームとしてはある程度の成果を出したと評価できよう。しかしながら,シーズン最終盤近くになるま で下位リーグへの降格可能性も残る状況であった。  J2 からの降格制度が始まった2012 年にはFC 町田ゼルビア(入れ替わりでV・ファーレン長崎が昇格),2013 年にはガイナーレ鳥取(入れ替わりでカマタマーレ讃岐が昇格)がJ2 から去った。理想論でいえば下位リーグであろうが上位リーグであろうが,地域の人々や企業が愛着をもって安定的にクラブを支える状況が形成されることが望ましいが,現実に目を向けると,J2 からの降格はクラブ経営にとってもファン・サポーターの心理面においても,非常に大きなダメージとなることが懸念される。ギラヴァンツは現在の本拠地の市立本城陸上競技場がJ1 規格を満たさないため,小倉駅新幹線口付近に新スタジアムが供用開始予定の2017 年3 月まではJ1 に昇格できない制約がある。しかし,着実に戦力を高め,下位リーグ(J3)への降格の心配ではなく近い将来のJ1 昇格へ希望がもてるような2014 年シーズンとなってほしいものだ。  一方,ギラヴァンツにとっての昨シーズンの課題は,チーム成績よりも集客数の方が深刻であったといえよう。本連載でも過去数回,集客面の課題と将来展望に触れているが,今回は新たなデータをもとに改めてこの問題を扱い,今後の改善策を考察する。

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© 2014 公益財団法人 アジア成長研究所
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