抄録
世界では,漁業資源の悪化が進んでいるが,主要な漁業国では従来の漁業の制度を根本から
見直し,資源の回復を図り,漁業を経済的にも強い産業に変質させた。それは従前の経験則か
ら漁獲の努力量をコントロールする手法では効果がないと判明したことから,資源を客観的に
評価し,数量目標を定め,その範囲内で漁獲を許容する方法を導入したことである。更に,漁獲する者の利益を増加させる手法として譲渡性個別漁獲割当量(ITQ)を導入したことである。日本では,小規模な沿岸漁業者が多くかつ補助金が投入され,現状を保守しようとする漁業者と行政の姿勢のためこの導入が遅れているが,「魚食を守る水産業改革髙木委員会」(日本経済調査協議会)と新潟県の取り組みとをきっかけに最近国政レベルでも検討が行われた。また,世界では養殖業が急速に発展する中,主要国では日本だけが,養殖業も衰退している。漁業権の排他性がみられる。これも水産業特区の活用でようやく改善の検討に着手した。筆者は今後も研究と実践を重ね政府に提言等を行う。