東アジアへの視点
Online ISSN : 1348-091X
特集号: 東アジアへの視点
35 巻, 2 号
東アジアへの視点
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 戴 二彪
    2024 年35 巻2 号 p. 14-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    研究報告書・技術報告書 フリー
    2006 年に国連が「責任投資原則(PRI)」を提唱して以来,企業が環境(Environment),社会(Social),およびガバナンス(Governance)の3 つの領域において実施した活動による持続可能な発展への貢献も考慮したESG 投資が注目されつつある。特に,2015 年に国連が17 のSDGs を打ち出して以降, SDGs 戦略の実現に効果的に促進できるESG 投資はより多くの国で支持されるようになった。中国において,欧米や日本と比べ,ESG 投資の開始が遅れたが,2021 年に中国政府がカーボンピークアウト・カーボンニュートラルというダブルカーボン目標を打ち出してから,中国の金融界・産業界において,ESG 投資・ESG 経営への関心が高まっている。ただし,ESG 関連情報の開示率と質,評価機関の信頼性,およびESG 評価の国際連携と海外発信などについて,まだ多くの課題が残っている。国のSDGs 戦略におけるESG 投資の役割を果たすために,中国における最も重要な国際貿易・国際金融都市であり最大の経済中心都市である上海は,強い責任感を持っている。上海のESG 関連施策では,その都市特性や多国籍企業・国際業務関連企業の示範的役割を活かしながら,上海および中国全国の主要企業のESG 経営水準の向上に向けて,重要なリーダーシップを発揮している。
  • ドミンゲス アルバロ, 柯 宜均
    2024 年35 巻2 号 p. 26-37
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    研究報告書・技術報告書 フリー
    世界中で,154の国と1 つの地域が,2050 年などの特定の期限までにカーボンニュートラルを達成することを約束した。これらの国々は合わせて,世界のCO2 排出量の79%,世界のGDPの90%を占めている。金融セクターでは,国際的なESG投資は2020年に35兆3,000億ドルに達し,増加傾向にある。本論文では,欧州連合(EU),英国,ドイツ,フラン スが,脱炭素化およびより環境に優しい経済への移行を達成するために実施している様々な政策やアプローチを紹介する。
  • 田村 一軌
    2024 年35 巻2 号 p. 38-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では,日本の温室効果ガス排出量と,国内大都市の例として北九州市の温室効果ガス排出量を概観したうえで,市レベルの温室効果ガス排出量推計手法の問題点を指摘した。すなわち,全国あるいは都道府県の排出量を,市内の活動量によって按分する現在の方法では,市の施策や市民の取り組みの効果を適切に反映し,効果を分析することが不可能である。そこで,家庭・業務・運輸の各部門における詳細なエネルギー消費量の把握に向けた取り組みや技術動向について整理した。カーボンニュートラルを達成するためには,データの収集・分析から始める必要がある。
  • 八田 達夫, 田村 一軌, 保科 寛樹
    2024 年35 巻2 号 p. 47-70
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    研究報告書・技術報告書 フリー
    1970 年代の日本では,地方圏から大都市圏への人口移動が急激に減少し,それと並行して日本の経済成長率も急激に低下した。本稿の目的は,1970年代における,この人口移動の低下原因を定性的に明らかにすることである。  大都市圏への人口移動の要因としては,①地方圏人口の減少,②大都市圏と地方圏間の所得や生活環境格差の縮小,③短期的な有効求人倍率の変動,が考えられる。  本稿は,1970年代において,全年齢層においても,中学・高校の新卒者においても地方圏人口の減少が大都市への人口移動減少をもたらした最大の要因ではないことを明らかにする。全年齢層については,大都市圏と地方圏間の所得や生活環境格差の縮小,および,有効求人倍率の地域間格差の縮小が大きな要因である。次に,新卒者にとっても,地方圏の1人当たり所得の相対的な改善と,社会資本ストックの相対的改善が,移動減少の大きな決定要因と なっている。  最後に,1960年代および70年代に行われた「国土の均衡ある発展政策」が,1970年代に所得や社会資本ストックの地域間格差を縮小させ,大都市圏への人口移動の急激な減少をもたらした可能性を示す。
  • 岸本 千佳司
    2024 年35 巻2 号 p. 71-104
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/01/08
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,台湾の代表的スタートアップ・アクセラレータの1つである「Garage+」(ガレージプラス),およびその母体である「時代基金會(Epoch Foundation)」の事例研究である。Epoch Foundation(1991年~)は,当初,台湾の大企業とMIT との国際産学連携推進を目的として設立されたが,やがて大学生向けの人材育成事業(Epoch School,1998年~),そしてスタートアップ支援事業(Garage+,2008年~)へと事業内容を拡大していった。言わば,Epoch Foundation には3つの事業部門がある(ただし,非営利事業体である)。MITとの国際産学連携事業には台湾の代表的企業がこぞって参加したため,そこから台湾の主要企業・経済人のコミュニティーが派生した。また,Epoch School の訓練プログラムの卒業生たちは同窓会的コミュニティーを形成していった。Garage+ のアクセラレータ・プログラムも,元来はEpoch School の卒業生が実際に起業するのを支援するためのものであった(その後,支援対象者の範囲を拡大した)。Garage+ は自身が支援した起業家たちによるコミュニティー形成を促すだけでなく,Epoch Foundation の他の2つの事業から派生したコミュニティーとの繋がりをもリソースとして活用し,スタートアップ育成において優れた実績を上げている。Epoch Foundation 全体としても,傘下の事業から派生した3 つのコミュニティーが部分的に重なり相乗効果を発揮することで発展してきている。本研究の目的は,EpochFoundation およびGarage+ のコミュニティー・ベースの運営と発展メカニズムを解明することである。
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