本研究は,台湾の代表的スタートアップ・アクセラレータの1つである「Garage+」(ガレージプラス),およびその母体である「時代基金會(Epoch Foundation)」の事例研究である。Epoch Foundation(1991年~)は,当初,台湾の大企業とMIT との国際産学連携推進を目的として設立されたが,やがて大学生向けの人材育成事業(Epoch School,1998年~),そしてスタートアップ支援事業(Garage+,2008年~)へと事業内容を拡大していった。言わば,Epoch Foundation には3つの事業部門がある(ただし,非営利事業体である)。MITとの国際産学連携事業には台湾の代表的企業がこぞって参加したため,そこから台湾の主要企業・経済人のコミュニティーが派生した。また,Epoch School の訓練プログラムの卒業生たちは同窓会的コミュニティーを形成していった。Garage+ のアクセラレータ・プログラムも,元来はEpoch School の卒業生が実際に起業するのを支援するためのものであった(その後,支援対象者の範囲を拡大した)。Garage+ は自身が支援した起業家たちによるコミュニティー形成を促すだけでなく,Epoch Foundation の他の2つの事業から派生したコミュニティーとの繋がりをもリソースとして活用し,スタートアップ育成において優れた実績を上げている。Epoch Foundation 全体としても,傘下の事業から派生した3 つのコミュニティーが部分的に重なり相乗効果を発揮することで発展してきている。本研究の目的は,EpochFoundation およびGarage+ のコミュニティー・ベースの運営と発展メカニズムを解明することである。
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