2014 年 25 巻 4 号 p. 87-96
昨今,気候変動に伴う災害が各地で頻発し,災害に強いレジリエントなまちづくりを目指す都市が増えてきている。上海市も中国の最大都市として,特殊な地理条件や都市構造により多発する自然災害や人為災害に対応するため,災害時でも社会経済システムを支える都市機能を維持するための防災減災のハード面での取り組みを進めている。しかし,ソフト面での対策,とりわけ市民への防災減災教育がまだ不十分で,市民の意識も低いことが本調査研究で明らかとなった。阪神大震災や東日本大震災等を経験し,防災減災教育面で多くの経験やノウハウが培われた日本の取組みと比較したところ,上海市の弱点および課題が浮き彫りになった。今後,上海市はレジリエントシティの構築を進めていくためには,防災減災教育も都市の発展速度に相応する形で強化していかなければならない。市民に健全な防災知識,技能を習得させ,高い防災減災意識を醸成させることが肝要である。