農業気象
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埼玉県所沢市附近に発生した昭和30年産小麦の凍霜害について
岡本 精純神前 芳信井上 弘治小高 真一
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1956 年 12 巻 1 号 p. 13-16

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抄録

1. この報告は昭和30年4月埼玉県所沢市附近に発生した小麦の凍害被害株に就て追跡調査したものである。
2. この凍害は従来, 北関東に発生の多かつた秋播型小麦の幼穂凍死とちがい, 春播型小麦の幼穂凍死であつて遅発茎の顕著な有効化と出穂遅延が特徴であつた。
3. 凍死を起した気温は4月5, 6両日の低温で, 本調査3圃場の枯死歩合 (推定) は「甚」68.3%,「中」48.1%,「軽」23.3%であつた。このような差を生じたのは作物の生育ステージのズレに主因すると思われる。
4. 凍害がその後の生育に及ぼした影響は, 遅発茎数, 稈長, 茎径, 出穂期などに著しくあらわれた。
5. 凍害の収量に及ぼす影響は上麦重歩合の低下, 屑麦重の増加, 千粒重の低下などである。「軽」では減収は見られず,「中」で3割,「甚」で7割の減収であつた。これは遅発茎の生産力の差異によるところが多い。
6. 春播型小麦の幼穂凍死による減収の把握を困難にするものは, 遅発茎の生産力の判定であるが, この生産力は出穂遅延日数, 稈長, 茎径と高い有意の相関がある。

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