抄録
著者は主として西日本災異誌によつて梅雨によつて起つたと推定される災害について調査した。まず梅雨による災害が全災害のうちでどのような位置を占めるかをみると, 古代においては干ばつが首位を占め梅雨についての記録が比較的少なかつたが, 14世紀ごろから次第に重要性を増し, 17世紀ごろになると梅雨は台風についで注目すべき位置を占めるようになつている。またこのころになると単なる長雨による災害ではなく, 梅雨末期の大雨が大きな役割を演ずることを, 洪水の旬別ひん度や, 川潮の旬別ひん度などから明らかにした。また山潮が風化花崗岩土地帯に多いことを示した。