抄録
目的: 血液製剤によるHIV感染者において, CD4値とHIV-RNA量, 抗HIV治療についての推移とそれらの関連性を明らかにする.
対象及び方法: 「エイズ発症予防に資するための血液製剤によるHIV感染者の調査研究事業」において, 1993~1998年度に提出されたデータを基礎とした. 1993年度第4期当初の事業対象者417人 (1993年度コホート) について, 1998年度までのAIDS発病状況とCD4値の推移を検討した. 1997年度第1期当初の事業対象者604人 (1997年度コホート) について, CD4値, HIV-RNA量と抗HIV薬の投与状況の推移, および, それらの関連性を分析した.
結果: 1993年度コホートのAIDS発病者数 (死亡を含む) は1993-1996年度の各4半期で平均8.7人を推移していたが, 1997年度以降は平均1.8人とかなり少なかった. CD4値の中央値は, 1993年度第1期の287/μlから1996年度では172-203と低下傾向であったが, 1997年度以降は, 1997年度第1期の206から1998年度第4期の240へと上昇傾向であった. 1997年度コホートのHIV-RNA量については, 1997年度第1期の2,600コピー/mlから1998年度第4期の685へと中央値は低下しており, また, 同時期の抗HIV薬の併用区分については,「RTI1剤」と「RTI2剤」の割合が低下し「RTI2剤+PI1剤」の割合が15.196から36.6%へと上昇していた. さらに, 抗HIV薬の併用区分の変更とCD4値, HIV-RNA量の変化との関連性が示唆された.
結論: 本事業対象者に対する抗HIV治療は「RTI2剤+PI1剤」の割合が上昇しており, CD4値, HIV-RNA量ともに改善傾向が見られ, さらに, これらの関連性が示唆された.