日本エイズ学会誌
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HIV/AIDS患者に対する歯科受診支援事例の検討
中野 恵美子千綿 かおる田上 正池田 和子伊藤 将子大金 美和武田 謙治福山 由美渡辺 恵岡 慎一木村 哲
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キーワード: 歯科受診, 歯科診療所
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2004 年 6 巻 3 号 p. 159-164

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抄録
目的: HIV/AIDS患者に対する歯科受診支援事例から患者の地域歯科医療機関受診ニーズと受診支援の問題点を分析し, 今後の課題を検討する。
対象および方法: 2001年7月から2002年6月までの1年間に歯科受診相談を受けたHIV/AIDS患者84名のうち, 患者の希望により外部の歯科医療機関への受診支援を行った38名を対象とした。歯科受診相談記録をもとに, 患者の地域歯科医療機関受診ニーズとニーズに対応するための問題点を検討した。
結果: 1) 患者が紹介先に希望していたことは, 土曜日または夜間に診療可能であることや通院しやすい立地条件などであった。2) 問い合わせを行った際, 患者の希望する診療内容に「対応可能」と回答した一般歯科診療所は36件中18件, 「対応困難」18件であった。3) 期間中, 38名中27名は地域歯科医療機関に紹介を行ったが, 11名は紹介保留となっていた。4) 診療情報提供書を発行した27名中6名は期間中に受診しなかった。
考察: HIV/AIDS患者の「社会生活に支障をきたさずに地域で歯科医療機関を受診したい」というニーズに対して, 現状では対応が追いついてはいない。今後, 患者のニーズに対応できる歯科医療体制を整えるためには, 歯科医療従事者を含む国民へのHIV/AIDSに関する知識の啓発とプライバシー保護の見直し, スタンダードプリコーション実施のための制度づくりが必要であると考える。
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