日本エイズ学会誌
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男性同性愛者に対する男性臨床心理士のクリニカル・バイアスの予備的研究
品川 由佳兒玉 憲一
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2005 年 7 巻 1 号 p. 43-48

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抄録

目的: 男性臨床心理士 (以下CP) の男性同性愛者に対するクリニカル・バイアス (以下, CB) の有無を検討するため, 男性CPの男性クライエント (以下, CL) に対する態度やアセスメントが, CLの性的指向, CPの性役割態度によりどのように異なるかを検討した。
方法: 無作為抽出された男性CP200名を対象に, 質問紙調査を行った。質問票にて, ある男性CLについての模擬事例文を呈示し, そのCLに対する臨床的判断や態度についての尺度に回答を求めた。模擬事例文の中で, CLの性的指向を操作した (同性愛/異性愛) 。その後, 回答者の性役割態度におけるリベラル度を尺度で測定した。
結果: 77名の有効回答数 (有効回答率38.5%) が得られた。回答者の性役割態度尺度の得点分布は, リベラル志向的な方向に偏っていた。分散分析の結果, CPの性役割態度の主効果及び交互作用はみられず, CLの性的指向の主効果のみがみられた。具体的には, CPの性役割態度に関わらず, 異性愛のCLより同性愛のCLに対し, ネガティヴな反応がみられた。
考察: 予想に反し, CP側の性役割態度要因が関連したCBは確認できなかった。しかしそれはわが国でCP側の要因によるCBがないことの現われではなく, 使用した尺度, 刺激呈示法などの問題に起因する可能性があり, より適切な研究手法の開発の必要があると考えられた。

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