抄録
日本では,2015年に人口に占める高齢者の割合が25%を超え,その比率は増加し続けている.同時に,認知症による高齢者の行方不明者数も年々増加している.多くの自治体では,見守りネットワークを立ち上げ行方不明者の早期発見を支援している.しかし,事前登録された身体的な特徴をもとに人手で捜索することにより,発見に時間がかかるため,さらなる早期発見が求められている.本研究では,歩行情報を事前登録するだけで,捜索時に複数の防犯カメラ映像から自動で足取りを調べ,見守りネットワークに提供することで,早期発見を支援する技術開発を目指す.防犯カメラ映像では,ガードレールなどが人の手前に映ることによりオクルージョンが発生するため,オクルージョンに頑健な照合手法の開発が必要となる.本稿では,顔,全身,歩容情報を用いた人物照合の先行研究の精度評価と,オクルージョンに応じて特徴量を適応的に選択することにより,高精度な照合を可能にする歩容照合技術を提案する.独自に作成したオクルージョン映像を用いて評価を行った結果,提案手法で平均83.4%と最も高い照合精度が得られた.今後は実際の防犯カメラ映像による精度評価を行うことで実用化を目指す.