抄録
本稿では新たな3次元情報推定の手法として,全方位カメラと一つの球面鏡で構成される反射屈折撮像系に基づいた単眼画像から,観察空間の奥行きを推定する手法を提案する.本手法は一度に広い空間の観察が可能である曲面鏡を用いた反射屈折撮像系を使用し,撮像系のセンサとして一台の全方位カメラのみを使用する.このため,本手法は学習に依存することなく,コンパクトな装置で広範囲の3次元情報を取得できる.3次元情報は空間認識にとって有用であるため,様々な分野において3次元情報の取得技術が急速に普及している.3次元情報のセンシング法としてレーザ光や多視点画像群によるものが知られており,また,深層学習による推定技術が発展を続けている.しかし,それぞれに大規模な装置や観測システム,事前情報が必要である.CGを用いて構築した環境において撮影した画像を用いた実証実験を通じ,多視点画像によるステレオビジョン,深層学習による奥行き推定との比較を行い,提案手法の有効性を確認する.