抄録
3次元仮想空間において,リアリティがありスムーズな動作や作業を実現するためには,動作や作業に対する運動主体感を効果的に得る事のできるインタフェースを如何に実現するかと言う事が大きな課題の一つである.仮想空間上で自分の体に目を向けると自分の体を見る事ができる「自己視」は,没入感を得る上で非常に重要な要素であると共に,制御問題においては,操作者が運動主体感を得る上でのキーポイントになるとも考えられる.そこで筆者らは,3次元仮想空間における実用的なタスクとして自転車走行を取り上げ,実空間に配置したエアロバイクを仮想空間における自転車走行のインタフェースデバイスとして用い,運動主体感の主観によらない定量的評価方法や,運動主体感を生じる主要因について実験検証を進めることで,仮想空間でのスムーズな動きが可能な独自のインタフェースを構築しようとしている.本報では,仮想空間走行中の視野中に,操作者の手やハンドルのアバターを自転車操舵に同期して表示する事を「自己視」の一例として取り上げ,これらのアバターの表示の仕方と運転者の姿勢安定性や走行制御安定性,運動主体感等との相関性に関する実験検討結果の概要,運動主体感の定量的評価方法の検討結果,更にはこのような「自己視」を活用した主体感インタフェースの有効性について報告する.