日本建築学会計画系論文集
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サウジアラビアにおける工事管理に関する研究 (その1) : 建設産業の動向と課題に関する調査分析
Fouad AL MAHASSENY嘉納 成夫
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1995 年 60 巻 470 号 p. 173-183

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抄録

1.序論 サウジアラピアの発展に伴い建設需要の活性化やプロジェクトに対する要求の変化によって、同国の建設産業に課題は多い。この課題を解決するため、新しい工事の運営方法が必要になる。同国内における建設産業に関する情報は極めて制約されているため、本論文では、Engineering News Record誌を中心に同国の動向を調査・分析した。本論文は、サウジアラビアの建設産業における動向と現状を明らかにし、今後の課題を指摘した上で、その解決策について提案することを目的としている。 2.建設産業における既往の研究 最近まで、サウジアラピアにおける建設産業に関する研究は、建設産業の-つの局面を中心に行うのみであった。それは、それぞれの課題を検討し、順位をつけることにとどまっており、解決策を提案するまでに至っていない。 3.サウジアラビアにおける建設産業 3.1. 歴史的な背景 サウジアラピアにおける建設産業の発展に対するU.S.Army Corps of Engineersの役割を検討した。そして、建設産業の組織化における外国企業の役割を明らかにした。3.2. 建設市場における工事量、動向、競争 サウジアラビアの建設市場は1970年代前半では、GDPの4%であり、1990年代では、GDPの12%となった。この建設市場の成長過程を明らかにした。そして、それぞれの市場の変動を論じている。表1は、サウジアラピアにおける建設市場の受注額、GDPに対する割合を詳しく示している。図1では、中近東における国際建設業の存在を明らかにした。3.3. 建設業における課題 文献調査で扱われた建設業における課題は以下の通りである : a)品質 b)コスト c)労働者 d)生産性 e)遅延 f)安全性 しかし、運営、材料、機械などの課題については、論じているものはない。 4.調査 4.1. 調査の目的 サウジアラピアの建設産業の発展や課題を理解する事によって、いろいろな変化や方策を論理的に提案することができる。この提案の目的は、建設産業の改善である。4.2. 調査の方法 Engineering News Record (ENR)誌を中心にサウジアラビアの建設産業を調査した。調査期間は、1960年から1993年までの33年間である。表2では、ENRの主な記事内容を表にまとめている。 4.3. 調査の結果 4.3.1. 建設活動の動向 サウジアラピアにおける主なプロジェクトを表にまとめ、掲載年月日を表し、さらにその詳細を表3に示した。表3は、調査期間に、ENRに掲載されたプロジェクトを示している。そのプロジェクトの種類、施主、契約における仕事の種類、プロジェクトの価格を示した。表3の内容の分析から、サウジアラビアにおける建設活動の動向を明らかにし、それぞれのプロジェクトについて論じている。同国内の主要な建設会社の一覧表を作成し、それぞれの会社の状況を明らかにした。4.3.2. 関連する法規 調査期間にENRに掲載されたサウジアラビアにおける法規に関する事項を明らかにした。法規は、財政に関する法規、会社と契約に関する法規、労働者に関する法規の3種類に分けた。それぞれの変更内容、理由、影響を論じた。4.3.3. 建設業における課題 サウジアラビアの建設業における外国人労働者の存在、数、国籍に関する問題を詳しく論じた。さらに、事例をあげてプロジェクトに発生する変更の原因とその影響を明らかにした。さらに、法律上の問題についても示した。 5.変更の提案 5.1. 変更された法規 年代順に関連する法規についての変更内容を図2に示した。その中には効果的な変更もあったが、非効果的な変更もあったことを明らかにしている。そして、その非効果的な変更における再検討の必要性を提案した。5.2. 課題と解決策 サウジアラピアにおける課題を11種類に分けた。そして、それらの原因を明らかにし、その解決策を提案した。図3では、課題4原因4解決策の関係を分析している。そしてその解決策を a)施主あるいは政府による解決策 b)設計者あるいは建設業による解決策の二つの項目に分けた。 5.3. サウジアラピアのため新しい工事の運営方法日本及び米国のエ事運営をめぐるそれぞれの長所を取り入れて、同国の建設産業を適正化することの必要性を指摘し、改善の方策を提案した。 6.結論 本論文の総括を示している。

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