抄録
1)前原地区は糸島郡の中央部に位置し, 各地区を結ぶ道路の基点になっている。交通上の結節点であり, 中心地区として発展する条件を備えている。2)前原地区は他地区に比べ商業機能が高く, 糸島郡の中心地区として周辺地区に商業上の影響力を持っているため, 前原地区へ依存している地区が多い。3)糸島郡は行政的に3つの町に区分されているが, 買物における依存関係は町域を越えて, 前原地区の商業機能は周辺地区におよび, 糸島郡は前原地区を中心として全体としての商圏を形成している。4)商圏は中心地区の商業機能の及ぶ範囲であるが, 業種によって商圏は異る。たとえば日用品などの商圏は狭く, 買廻り品などは広い。このように商圏はどの業種を指標にとるかによって異ってくる。5)既に発表した論文においては, 町別に集落配置のパターンを設定して考察してきたが, これを綜合して郡全体で考察することによって, 依存関係を明らかにとらえることができた。町域にとらわれずより広い範囲を対象として調査することが集落計画上必要である。6)地区間の依存関係をみると, 周辺地区から前原地区へ一方的に依存している。周辺地区間の依存, 前原地区から周辺地区への依存は非常に少ない。7)前原地区に隣接している地区では隣接していない地区よりも, 前原地区への依存率が高い。8)前原地区からの距離が遠くなるにつれて, 前原地区の影響力が低くなるということは必ずしもいえない。前原地区にだけある業種については前原地区から近くても遠くても前原地区に依存しなければならないことになる。中心地区と周辺地区の依存関係を単に距離の函数としてとらえることはむつかしい。9)菓子・パン, 酒, タバコの3業種の自給率は高く, 距離的理由で依存し, 徒歩と自転車で買物に出かけ, 買物回数は週〜月単位が多い。10)自給率の高い業種は距離的理由, 徒歩と自転車, 週単位で買物し, 依存率の高い業種は機能的理由, 自転車とバスあるいは汽車, 月または年単位で買物をする。11)農村地域では業種によって, 地区によって, 郡内の依存関係は異っている。その主な理由として, 商業機能, 集落配置, 交通などの要因が挙げられる。以上, 集落間の依存関係を地区単位で考察し, 購買における基礎的な問題をとりあげてきたが, 商業機能の成立基盤となる集落の規模・性格, 施設立地と集落の分布, 集落の段階構成などについては次の機会に報告したい。