日本建築学会論文報告集
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メンブレン防水層の疲労破断と屋外ばくろの影響
小池 迪夫
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1970 年 170 巻 p. 1-10

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抄録
防水層, とくに屋根防水層にとって重要なことは, (1)確実な連続防水皮膜を形成すること, (2)防水層下地のキレツやジョイントのムーブメントによって破断されないこと, (3)そのムーブメントを受けながらウエザリングなどの劣化条件に耐え, 長く防水性を保持すること-である。この3要件のどのことつが欠けても満足な防水層とはならないが, (2)および(3)の要件はそれぞれ前段の要件が満たされた上で問題となるものである。この研究は(2)の要件について, 防水下地のジョイント幅を繰り返し<拡大・縮小>させた場合に生ずる防水層の損傷を観察検討したものである。試料は昭和40年に入手したアスファルト系防水層4種, 高分子塗膜防水層4種, 高分子シート防水層4種の合計12種であり, それぞれ, 比較用健全試料ならびに札幌および東京において3年間屋外ばくろした試料について試案の方法で試験を行なった。また, 高分子塗膜防水層の健全材については, ほかに2種の試験方法によっても試験を行ない, 疲労破断の状況を比較検討した。試験結果は小さなムーブメントでも多数の繰返しによって防水層に疲労破断が生ずることを示した。アスファルト防水層および塗膜防水層については, 実際の屋根における経験に近い結果を示した。しかし, 合成ゴムシート防水層は, この当時のものは実際の屋根では数mm以下のキレツ部において破断が観察されているのに反し, この試験ではすぐれた結果を示した。この差は実際の屋根における破断は主としてオゾンによるものであり, この試験は疲労を対象にしていることに由来する。なお, この試験は防水層押えのない状態で行なっており, 押えのある場合はこの試験の結果より疲労による損傷は著しくなると予想されるが, これは別途検討を要することである。この報告は先に発表した2篇の報告に屋外ばくろした試料についての結果を包括したものである。
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© 1970 一般社団法人日本建築学会
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