抄録
近来の耐震構造では大部分の水平力を負担する剛なる部分と, 極めて僅な水平力を分担する柔なる部分の組合せによって, 全体の構造物が形成されていることが多い。柔剛両部がそれぞれ独立にあって地震を受ければ別々の動きをする。両者が一体となって同一の振動をする場合には柔剛両部分の間に力のやり取りがなければならない。この論文はこのやり取りの力を振動学的手段によって求めようとするものである。この力は柔剛両部の接続部に作用するものであるから, その設計上の一要因となる。柔剛架構に連続する現場打スラブがあれば, これに吸収される場合も多いかと思うが, 現場打コーアと組立式柔部から成る場合, あるいは主建築物と付属棟の接続などでは設計上無視できない。この問題に関して, 柔剛両部分のそれぞれの重心と剛心が一致し, これが振動方向に並ぶ場合に1層および2層の構造物についてすでに論述したことがある。本論では柔剛両部のそれぞれの重心と剛心が振動方向と直角な方向にある一層建築物だけを扱う。捩れ振動を伴う場合に帰する。