日本建築学会論文報告集
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中心地区空間におけるイメージの構造 (その 4) : レジビリティとアンビギュイティに対する情報理論的考察
志水 英樹福井 通
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1978 年 263 巻 p. 101-108

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抄録
本論文において, 中心地区空間における"レジビリティ"(わかりやすさ)と"アンビギュィティ"(多義性)の二つの概念の間の関連性について, 情報理論的にアプローチし, 次の三つの側面から考察してきた。第一は, 地区を構成するエレメントの中で, 特定のキイエレメントが高い情報量を持ち(ビット→チャンク→シンボル), その"アンビギュィティ"が高いとき, その地区全体としての"レジビリティ"が高まるという仮定である。この仮定は, 更に, 地区の"アンビギュィティ"が都市の"レジビリティ"を高め, 更に, 都市の"アンビギュィティ"が, 国の"レジビリティ"を高めるといった具合に, 対象とする環境の水準に応じて, 更に上位の水準との関連性を説明する意味で発展性を持っている。このような"レジビリティ"と"アンビギュィティ"との段階的な発展過程の中に, それらの動的な共存性が示されている。第二の側面は, 本論文の主たる命題である。地区レベルにおける"アンビギュィティ"と"レジビリティ"の共存のあり方である。被験者の内的な想起プロセスの時間的経過の中に, イメージのエントロピーの増大という一般的傾向があり, その前半部の高い集中性が地区の"レジビリティ"を示し, その後半部の高い拡散性が地区の"アンビギュィティ"を示すのではないかという仮定である。これは, 被験者の想起プロセスという動的な過程の中に, "レジビリティ"と"アンビギュィティ"の共存性を示すものである。第三に, 地区の発展過程における"レジビリティ"と"アンビギュィティ"の問題である。地区が自然発展的に成熟している期間は, その"アンビギュィティ"を高めつつある期間であり, のそエントロピーが十分高まったとき, 不連続な意志的なプロセスとしての地区計画が, 地区の想起順位別エントロピーの前半部を低下せしめ, 地区の"アンビギュィティ"を犠牲にすることなく"レジビリティ"を高めるという仮定である。
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© 1978 一般社団法人日本建築学会
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