日本建築学会論文報告集
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枠付き耐震壁のひびわれ後の性状に関する研究 : 間接実測値の解析法の提案とその適用例
今井 弘小杉 一正
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1979 年 278 巻 p. 81-90

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抄録
実測されたひずみと節点外力に最も良く合うように, 誤差の最小2乗法理論に基づいて構造物の変形状態や応力状態を解析する方法を示した。本方法は, 弾塑性域にわたって成立するので, 実験データが十分に得られている試験体の破壊経過や, 各部材の履歴を詳しく調べるのに適している。鉄骨枠付き耐震壁のせん断試験結果に適用した結果, 試験体がたどった破壊経過, 塑性域の変形状態と応力状態, 及び各構造部材の履歴(応力-ひずみ関係)を得ることができた。これらの結果と, 第3章で行なった理論解析結果をまとめると次のようになる。i)壁コンクリートはひびわれ前では, ほぼ純せん断応力状態である。ii)壁コンクリートはひびわれ後圧縮場を形成し, 周辺枠を外側に押し出す。また壁筋は引張斜材として働き, 壁筋比が多い本試験体の場合には, それはコンクリートの引張強度_cF_tを降伏点とする原点指向の履歴特性をもつ材に理想化される。iii)鉄骨枠耐震壁では, 壁のひびわれ後の枠剛性は, 鉄骨の弾性剛性で評価できる。iv)本試験体では, 周辺枠は軸力が支配的であり, 曲げモーメント量は小さい。最大耐力間近になると, せん断力もかなり大きくなる。なお, 周辺枠が鉄骨鉄筋コンクリートの耐震壁に対して解析した間接実測値については, 次の機会に行なう予定である。
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© 1979 一般社団法人日本建築学会
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