日本建築学会論文報告集
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多層構造物の統計的耐震設計法に関する基礎的研究 : その 1 解析方法および塑性率制御設計における適性剛性分布と入力の特性との関係
曽田 五月也谷 資信
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1980 年 288 巻 p. 97-105

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抄録
はじめに, 地震動の不確定量としての特性を考慮して多層構造物の「統計的耐震設計法」を体系化して行くうえでの基本となる解析方法を示し, 次いで解析例として, 塑性率制御設計における入力の特性剛性分布との関係について検討した。基礎に対する入力のスペクトル特性としては単独のピークを持つ場合のみに限られているが, この場合, 卓越周期が同じであれば入力加速度の最大値の「大・小」およびその発生時刻の「早・遅」, さらにスペクトル密度の選択度の違いなどは適性剛性分布の形に余り大きな影響を及ぼさない事が分かった。それに対し, 入力の卓越周期の相違による影響は大きく, 主要モードの固有周期と入力の卓越周期との関係に注意が必要であり, この点に関しては更に, スペクトル特性が複数個のピークを持つ入力に対して解析を行なう事が不可欠である。本論を展開して行く上で基本となっているのは, 「塑性変形を考慮した設計において許容される塑性変形は, 振動がほぼ正負対称で十分に安定な履歴を呈する範囲に限る」という, 耐震設計上容認されると思われる考え方であって, この条件は, 等価線形化法の適用性の条件と等価であると考えられるので, 本論に示した手法は十分に妥当なものと考えられる。更に, モード解析の手法を用いているので, 多くのパラメーター・スタディを能率的に処理出来るなどの利点がある。ちなみに, 先の精度の検証の項において, 3質点モデル1ケの解析に要する演算時間は, 100ケのサンプル波によるSimulationではCPU約37秒, 等価線形化法ではCPU約1.5秒であった。ただし, Simulationの場合に, サンプル波の発生に要する時間は除外してある。後半に示した適性剛性分布の決定に関しては, 1案として塑性率制御を適性化の規範に選んだが, 「適性」の意味には多くの問題点が残されており, 更に多方面からの検討を加えて行く予定である。以上の解析には, 全て東京大学大型計算センターのHITAC8800/8700を使用した。
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© 1980 一般社団法人日本建築学会
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