抄録
以上, 電算機-試験機オンラインシステムを用いた2層1スパン鉄骨骨組の地震応答解析法について説明したが, 次のような結論が得られた。1) 従来から行ってきた1層の骨組(1自由度系)の解析に限らず, 2層骨組(2自由度系)のオンライン解析も可能である。本報で示した2層1スパン鉄骨フレームの解析例では, 弾性範囲内の応答については, 計算機のみによる結果とほとんど同程度の精度の結果が得られることを確めた。(骨組の一部が塑性化する弾塑性領域における応答解析結果の信頼性については, その精度を検討するにたる復元力特性の解析モデルがないので直接それを検討することが困難である) 2) 原理的には, このオンライン解析法を2自由度系以上の多自由度系へ拡張することは可能である。本報告で示したオンライン解析例では, 式(4.2a, b)の制御精度でほぼ満足すべき結果を得たが, 自由度が増加すればそれだけ制御すべき変位量が増え, 1つの層の変位制御誤差が他の層の復元力の値に大きな影響を与えるから, さらに高い制御精度と測定精度が要求されよう。3) 本解析例のように, 骨組各層の復元力が直接測定できる場合には, その値をそのまま計算に使用出来, また, 復元力と層変位とを関係づける剛性行列の作成を必要としない中央差分法が, オンラインシステムにおける振動方程式の解法に適している。4) 変位制御における小出し分割変位出力は, 1, 2層の変位経路の制御ならびに変位制御精度の向上, 試験体骨組への衝撃的載荷の緩和, 試験機荷重の安定性確保に有力な手段である。