日本建築学会論文報告集
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空隙構造依存性に基づくコンクリート強度推定法に関する研究 : 第 1 報圧縮強度と空隙構造の関係
吉野 利幸鎌田 英治田畑 雅幸柳 敏幸
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1982 年 312 巻 p. 9-17

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抄録
本報では, 空隙構造依存性に基づくコンクリートの強度推定法に関する研究の第1報として, コンクリートの圧縮強度と空隙構造の相関性を, 各種の空隙指標を用いて検討するとともに, これらの指標による圧縮強度との関係式を誘導し, 既往の強度式との比較検討を行った。その結果は次のようになる。1)コンクリートの圧縮強度は, コンクリートの空隙率と相関性をもっている。しかし, 空隙率を試料全体の空隙率である総細孔量で表現した場合, 圧縮強度との相関関係は, 試料中の骨材量, スランプ, 骨材種別など空隙構造の測定結果からは解析困難な要因に影響され, この指標を基本とする強度推定式の確立は困難であると判断した。2)コンクリートの空隙率を有効細孔量で表現した場合, 総細孔量による表現と比較して圧縮強度との対応がすぐれている。しかし, この相関性は, 材令や養生条件によって異なり, 有効細孔量のみではコンクリートの圧縮強度を表わすことはできない。3)有効細孔量を基本とし, これに, 中央値, もどり比の空隙構造の指標と結合水率または材令を加えた4変数によってコンクリートの圧縮強度を表わした場合, 材令や養生条件による相関性の相違は除かれ, 強度推定式となりうる実験式を誘導することができた。4)140データによる重回帰分析により誘導した強度推定式は, 空隙率を硬化セメントペーストの空隙率とし, 粒径を空隙径と読みかえたKnudsenタイプの式となり, これに, 空隙の独立性, 水和の進行(結合水率または材令)により若干の補正を加えたものとなる。この式による計算値と実測値の対応は, Ryshkewitchの式, Knudsenの式, ゲルースペース比による計算結果よりもすぐれている。なお, 材令, 養生条件, セメント種別など圧縮強度と空隙構造の相関性に影響する要因についての詳細な検討, 骨材空隙や骨材形状による影響などの点については次報において報告する予定である。
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© 1982 一般社団法人日本建築学会
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