日本建築学会論文報告集
Online ISSN : 2433-0027
Print ISSN : 0387-1185
ISSN-L : 0387-1185
情報環境に関する研究 : 第 1 報視探索時の眼球運動
荒木 正彦橋出 憲一田中 誠杉本 忠雄
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 312 巻 p. 92-99

詳細
抄録

標本内の分布密度が高くなるに従って, 静視野ではその判別領域が狭くなり, また動視野では分布要素による雑音のため周辺視により十分なターゲットの目安をつけることなく視探索を行なうため, ターゲットを注視する割合が下がる。視探索過程を眼球運動の軌跡より見ると, ターゲットを見つけるまでの眼球運動とその後の眼球運動には大きな差異のあることがわかる。ターゲットを見つけるまでの軌跡が要素の配列にしたがい整理されているのに対し, その後の軌跡はターゲットの定位のための動きと新たな要素の視探索のための動きが交錯し, ランダムになる。標本内の要素の分布の拡がりについては, それが小さくなるに従って弁別に要する時間が長くなる。また配列については, それが不規則になるに従いまた要素の種類が多くなるに従って, 単位時間当りの視探索量が減少し, 個々の要素の判別のための注視持続時間が長くなる。これらの結果より, ターゲットの視探索過程はその課題の性質が決まれば, 一つの判別対象当り一定の時間で判別し, 順次眼球運動により判別する要素を変える過程であることがわかる。したがって, ターゲットの視探索過程には, その標本内の判別しなければならない要素の量(標本内の視認単位数)に対応した確率測定を当てはめうることが予測できる。

著者関連情報
© 1982 一般社団法人日本建築学会
前の記事 次の記事
feedback
Top