日本建築学会論文報告集
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超大型浮遊式海洋構造物の波浪応答解析 : 第 1 報流体と弾性梁との動的相互作用
岡本 強一増田 光一加藤 渉
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1982 年 314 巻 p. 166-175

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抄録
本研究は, 超大型浮遊式海洋構造物の波浪応答特性の究明を計る為の理論計算手法の確立を目的としている。本報においては, その第一段階として, 構造体を等価梁とみなし, 流体力の周波数依存を考慮した場合の有限要素法による運動-振動応答解析手法を展開し, さらに, 分割模型による水槽実験と数値計算結果との比較検討を行った。その内容は以下のように要約される。1)一色のHamilton-Dirichletの原理を出発点として, 外部領域の速度ポテンシャルを仮想境界上の吹き出し分布により表示した流体-構造物系の変分原理を定式化した。ここでは, 仮想境界の設定位置の違いによる2種類の変分原理が示され, 仮想境界を構造体の近傍に設定した場合の有限要素解析上の有効性について述べた。2)その変分原理を用いて, 流体領域の2次元近似を行い, strip法によっい波浪強制力をradiation potentialを用いて表現し, 有限要素法による運動-振動方程式の定式化を行った。ここでは, 波浪応答解析において流体力の周波数依存を考慮する為に, dry mode形による基準座標系への変換後, 流体作用による各係数マトリックスの重ね合わせが行われた。流体と構造物との動的相互作用は基準座標で議論する立場をとっている。また, 本法の特徴として, strip法を用いることにより流体作用は2次元radiation potentialのみで表現され, 解析上簡単化された。3)以上の手法による数値計算と, 剛性変化の容易な分割模型を用いて波浪中挙動応答を測定した実験結果の比較検討を行った。その結果は次のようにまとめられる。a)P値の計算結果から, 浮遊構造物が超大型化した場合, 特に2節モードのP値のピークが運動応答量の大きい低周波領域に接近する。このとき, 運動モードに与える影響は大きく, 2節モードの同調点の大きさの2倍程度のモード間連成影響があることが判った。したがって, 運動と振動とを統一的に扱った解析手法を用いて, モード間連成の影響を十分に検討する必要がある。b)P値により推定されたモード間連成影響の増大した低周波領域では, 変位振幅が剛体運動の計算値と較べて2倍近い値を示すこともある。超大型の浮遊構造物の波浪応答では, モード間連成による運動応答領域への影響を十分考慮する必要がある。しかも, 剛体運動の周波数範囲では, 流体力は強い周波数依存をうけることになるので, これを考慮した応答解析が必要となる。c)構造物の剛性が増大すれば, 変位量は剛体運動としての計算値に接近するが, 浮遊構造物の超大型化に伴い剛性が減小した場合は, springingの起振力と考えられている1次同調及び高次同調の他に, 低周波領域へのモード間連成をも考慮しなくてはならない。d)変位応答に関する計算値と実験値との比較から, 両者の傾向について良い相関が得られた。すなわち, 変位応答に関して, 本手法の妥当性が認められる。さて, 本報において超大型浮遊式海洋構造物の波浪応答特性について基本的性状が明らかにされたので, 今後, 数多くの解析を行い, 波浪応答に与える浅海影響, 浅吃水影響などについて考察するとともに, 不規則波応答解析, 構造体を"板"とみなした解析についても次報以降において検討・報告の予定である。
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© 1982 一般社団法人日本建築学会
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