日本建築学会論文報告集
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シールドジョイントの挙動 : モデル試験装置によるジョイントムーブメントとシーリング材に生ずる応力の観測
小池 迪夫田中 享二冨板 崇小田 慎一
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1983 年 329 巻 p. 150-159

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抄録
屋外でのシールドジョイントの挙動を明らかにするため, モデル試験装置および応力・変位測定装置を開発, 試作し, 東, 西, 南, 北, 水平上向き面に設置, 2年間の観測を行い, 次の結論を得た。(1) 暴露方向については, 東, 南, 水平上向き面のジョイントムーブメント, シーリング材に生ずる応力が大きい。特に南面については冬期にムーブメントが大きくなるが, この季節は気温が低く, 感温性の大きシーリング材では材質が硬くなるため大きな応力が生じる。従って力学挙動の観点から厳しい方位であるといえる。一方水平面のムーブメントが大きくなるのは, 太陽高度の高くなる夏期である。感温性の大きいシーリング材では柔くなるので, 応力はそれ程大きくならない事が多い。今回の測定では2成分形ポリサルファイド系シーリング材がその例である。しかし夏期は気温が高く, しかも水平面日射量が多いため, 材料の劣化に大きな影響を及ぼし, やはりシーリング材にとって厳しい方位の一つであると考えられる。東面もムーブメントは大きい方であり, シーリング材に大きな応力が生ずる。特に, 日の出直後のジョイント縮小速度の大きい点が特徴である。北面は日射を受けないか, 受けてもわずかであり, ジョイントムーブメント, 応力が小さい。シーリング材にとっては最も穏やかな方位であるといえる。(2) シールドジョイントの挙動における季節の差については, ジョイント幅が夏期には全体的に縮小側に, 冬期には逆に拡大側へ移動する。その時シーリング材に生ずる応力は材料の感温性と関係する。すなわち感温性の小さい場合は, 応力がムーブメントに正確に対応し, 夏期には圧縮側, 冬期には引張側に移動する。感温性が大きい場合は, 温度により材料の力学的性質が変化するため, その影響が複合化され多少複雑な挙動を示す。
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© 1983 一般社団法人日本建築学会
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