日本建築学会論文報告集
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クレーン走行ばりの疲労損傷に関する研究 : プレートガーダー形式のクレーン走行ばりの引張りフランジにおける損傷に関する実験
海野 三蔵見村 博明
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1983 年 333 巻 p. 17-25

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抄録
プレートガーダー形式のクレーン走行ばりの下フランジの損傷のうちガセットプレート端部から生じる疲労き裂に関して, 静的実験による応力集中の調査, および疲労実験によるき裂発生の検証結果より以下のことが明らかになった。1) ガセットプレート端部の応力集中率(K)はRタイプ, Aタイプともt_g/t_fの値に影響され, 通常の板厚比(t_g/t_f=0.5〜0.75)ではR20で1.45〜1.50, R50で1.15〜1.35, R80で1.15〜1.2, A60, およびA90で1.4〜1.6, A120(ガセット形状II)で1.3〜1.5程度であった。2) ガセットプレートに作用する面外曲げモーメント(m/M=1〜4×10^<-3>)による付加応力の応力集中に与える影響は, Rタイプではガセットプレートの曲率半径による差異は顕著ではなく, (4)式第1項の値の5〜8%, AタイプではA60, およびA90で同値の約10%であったが, A120(ガセット形状II)では同値の約50%に達しその影響は大きい。3) ガセットプレート端部から生じる疲労き裂はAタイプでは溶接の止端部, Rタイプではグラインダー仕上げによる粗面からで, 両方ともフランジ側縁から生じた。5×10^5<N<2×10^6の範囲では現行の鋼構造設計規準による許容応力度以下の応力度で破壊に至った。また, 200万回疲労強度はRタイプ(R50)で約1.13t/cm^2, Aタイプで0.95t/cm^2の値が得られた。4) ガセットプレートに面外曲げモーメントを作用させた, 疲労実験では, A120(ガセット形状II)において, き裂の発生, および破壊時期が早まるが, 他形状のものに対してはmによる顕著な差異は認められなかった。クレーン走行ばり等, 繰り返し応力を受ける鋼ばりの引張フランジのガセットプレート端部から生じる疲労き裂に関しては, ガセットプレートの形状や端部の仕上げ処理によって疲労耐力は多少高まるが, 母材のそれと比較した場合には相当に疲労耐力は低下する。従って, 設計においては, ガセットプレートをスチフナに取り付けるなど, 直接に引張フランジに接合する方法はできるだけ避けるべきであろう。
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© 1983 一般社団法人日本建築学会
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