抄録
食の安全と安心の確保のために,トレーサビリティシステムを社会的インフラにしようとする動きがあるが,安全性は科学的な手法で証明することが可能であるものの,安心は情報の信頼性によって確保されるものであることから,食に関わる全ての関係者のコンプライアンスが問われている.農場から食卓までの安全と安心を確保するためのトレーサビリティシステムは,フードチェーン全体をカバーする必要があること,及び消費者視点からあらゆる食品を一体的に取り扱わなければならないことから,追跡・遡及できる情報は,品目別に異なる安全確認履歴と,取引や移動に関する流通経路履歴とに区別して取り扱うことが必要である.そのうち標準化できるのは流通経路履歴であり,使用されるコード体系やアクセス方法などの相互運用を推進する必要がある.経済の効率化やグローバル化が進む中で食の安全と安心を確保するためには,食品関連企業の危機管理目標を「Food Safety」において,生産,処理・加工,流通・販売の各段階で,相互支援によるサプライチェーンを構成するためのビジネス・プロセス・リエンジニアリングが必要である.