抄録
農業機械の耐用時間と使用時間を考慮し,産業連関表に基づいたデータベースを用いて,機械化された水稲生産の直接・間接エネルギーを求めるインベントリ分析手法の提案を行った.提案された手法を用いて,標準的な水稲生産(宇都宮大学附属農場,栽培面積:7.2 ha,玄米収穫量:4,650 kg/ha,2001年)から,エネルギー消費量を求めた.直接・間接エネルギーの合計が22,621 MJ/haとなり,間接エネルギーが全体のエネルギー消費量の62.8%を占め,肥料や機械の製造過程におけるエネルギー消費量の割合が大きいことを明らかにした.過去の機械化水稲生産との比較から,機械や資材等の製造エネルギーが減少していること,農薬や化学肥料の少量散布によってエネルギー消費量を少なく抑えた水稲生産が可能なことを示した.また,機械化された農作業のなかで,耕耘,代掻き,移植,収穫,および籾乾燥の作業時間を削減できる水稲生産技術の導入,有機肥料の活用による化学肥料使用量の削減が,水稲生産を利用したエネルギーの産出/投入比を向上させる大きな要因になることを明らかにした.さらに,玄米利用エタノール生産は,エネルギーの産出/投入比が1.47以下となり,エネルギー効率が高くないことが明らかとなった.水稲生産のバイオマスエネルギー利用では,エタノール生産に特化するのではなく,玄米,籾殻,稲わらなどの燃焼エネルギーの利用や,燃焼エネルギーによる発電を行うことが重要であることを指摘した.