抄録
高品質なウンシュウミカンを生産するためのシートマルチ栽培が普及しているが,品質,収量,樹勢を調和させた水管理は難しい.最も大きな理由はかん水の適否を判断するための低コストかつ簡易な診断指標が少ないことがあげられる.そこで,水ストレスと果実硬度の関係に着目したところ,夕刻の果実硬度から翌朝の最大水ポテンシャルを推定できることが明らかになった.また,硬度計で計測した果実硬度と手の触感による硬度の間には高い相関が認められた.そこで,硬度の異なる模造果実をシリコンで試作し,これを利用した水管理を2年間にわたってほ場で実施したところ.収量を落とさずに,高品質な果実の生産が可能であった.これらのことから,シリコン製模造果実を利用した硬度スコアはマルチ栽培における水分管理指標として利用できることが明らかになった.