農業情報研究
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原著論文
営農データの収集・活用とスマート農機の運用を通した大規模水田作経営の規模拡大と増収の両立
清水 ゆかり板谷 恭兵寺崎 亮石川 哲也
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2024 年 33 巻 1 号 p. 14-26

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抄録

本研究は,大規模水田作経営における営農データやスマート農機の活用による規模拡大への対応と増収の両立条件の解明を課題とする.茨城県の大規模水田作経営2法人における2020年から2022年の取り組みを,データ駆動型生産体系の構築,10 a当たり全刈り収量の変化,米生産費,自動運転田植機の運用について検討する.2法人は3年間で40 ha以上規模拡大しており,スマート農機の積極的導入や新規雇用の増加等の費用が増加しても,経営全体での10 a当たり生産費は削減された.ただし,急激な規模拡大に対応を迫られる中で,適期作業と適切な管理を実施することは困難である.この課題に対して,2法人は圃場別データセットの構築や栽培管理支援システムによる発育予測等,ソフトウェアの活用によるデータ駆動型経営改善を実施し,品種別の作付や栽培方法を見直すことにより,急増した経営耕地においても適期にかつ適切に栽培管理を実施することが可能となった.規模拡大局面において増収を実現するためには,農地の集積・集約による土地条件の高度化とともに,スマート農機の効率的運用による軽労化,営農データの収集・活用によるデータ駆動型経営改善に取り組むことが重要である.

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