農業情報研究
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原著論文
  • 松本 宜大, 下司 純也, 曹 巍, 藤岡 宏樹
    2024 年 33 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    摘採時期が品質に大きな影響を及ぼすチャの栽培において,綿密な収穫計画を立てるためには,早期の摘採適期予測が必要である.しかしながら,従来の予測モデルは,萌芽日の情報が必要であり,また,摘採適期の2週間前頃に予測を行うものであった.本研究では,京都府宇治市で栽培されたチャ「やぶきた」,「さやまかおり」,「おくみどり」の10–19年分の摘採適期を,その約1か月前である萌芽期以前の気象データ(日平均気温・日最高気温・日最低気温のいずれか1つ,日平均相対湿度,日降水量,日照時間)の積算値から予測する線形重回帰モデルを,ステップワイズ法によって作成した.積算期間は,3月1日から平均の萌芽日までで,積算日数が30日以内となるすべての組み合わせとし,Leave-One-Out交差検証による検証データの摘採適期の予測値と実測値の絶対誤差の平均値(MAEtest)が最小となるモデルを選出した.その結果,予測値と実測値の平均絶対誤差が0.8–2.0日となり,いずれの品種でも実用上十分な精度で予測ができた.また,MAEtestは1.0–2.3日となり,萌芽期以降の気象データの積算値を用いた従来のモデルによるMAEtestより小さくなった.以上より,チャの摘採適期をその約1か月前までに予測し得ることが示された.

  • 清水 ゆかり, 板谷 恭兵, 寺崎 亮, 石川 哲也
    2024 年 33 巻 1 号 p. 14-26
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,大規模水田作経営における営農データやスマート農機の活用による規模拡大への対応と増収の両立条件の解明を課題とする.茨城県の大規模水田作経営2法人における2020年から2022年の取り組みを,データ駆動型生産体系の構築,10 a当たり全刈り収量の変化,米生産費,自動運転田植機の運用について検討する.2法人は3年間で40 ha以上規模拡大しており,スマート農機の積極的導入や新規雇用の増加等の費用が増加しても,経営全体での10 a当たり生産費は削減された.ただし,急激な規模拡大に対応を迫られる中で,適期作業と適切な管理を実施することは困難である.この課題に対して,2法人は圃場別データセットの構築や栽培管理支援システムによる発育予測等,ソフトウェアの活用によるデータ駆動型経営改善を実施し,品種別の作付や栽培方法を見直すことにより,急増した経営耕地においても適期にかつ適切に栽培管理を実施することが可能となった.規模拡大局面において増収を実現するためには,農地の集積・集約による土地条件の高度化とともに,スマート農機の効率的運用による軽労化,営農データの収集・活用によるデータ駆動型経営改善に取り組むことが重要である.

  • 松岡 和輝, 高杉 翔, 岡本 博史
    2024 年 33 巻 1 号 p. 27-43
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    ブルーベリー栽培において,花芽や果実のモニタリングは圃場管理の観点で重要である.しかし,日本におけるブルーベリー栽培は主に小規模かつ人手によって行われており,圃場全域をリアルタイムでモニタリングすることは困難であった.そこで,本研究ではブルーベリー圃場におけるモニタリングの自動化を目的として,深層学習による物体検出を用いた,果樹ごとの花芽数と果実数の推定可能性についての検証を行った.まず,花芽については正常芽および凍害芽の検出と分類を行い,果実については未熟果および成熟果の検出と分類を様々な解像度で検証した.その後,単回帰式を用いて画像中の花芽数と果実数を推定した.その結果,画像中の正常芽,成熟果,未成熟果の自動計数の精度は高い値を示したが,凍害芽については低い値を示した.花芽検出では精度指標APが最大で0.755,回帰誤差指標MAPEが最小で10.79%,果実検出ではAPが最大で0.815,MAPEが最小で23.84%であった.さらに,撮影画像に映り込んだ果実数から葉に隠れた実を含む実際の総果実数を推定可能か検証した結果,画像中果実数と総果実数には正の相関が見られ(r=0.96,p<0.001),単回帰誤差はMAPEで21.2%となった.そして,画像から実際の果実数を推定する際に,葉の被覆率は推定誤差に大きく影響するが,撮影方角を考慮する必要や樹列の両側から撮影する必要はないことを明らかにした.最後に,花芽数・果実数の自動計数・分類技術の応用として,早期(花芽期)での収量予測,蜂による受粉効果の空間的変動の把握,収穫適期・収穫順序の判断など現場適用に関する検討を行った.

  • 大林 憲吾, 小池 聡, 田中 慶輔, 西崎 昌宏, 石津 直彦, 栗澤 傑, 楠本 亮也, 柳井 瑞帆, 渡邊 亘, 向島 信洋, 大川 ...
    2024 年 33 巻 1 号 p. 44-58
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    LAMP法を用いた遺伝子診断により測定したブロッコリー根こぶ病菌密度を,圃場ごとに見える化し対策の処方箋を提示できる,ブロッコリー根こぶ病対策の意思決定ツールを開発した.見える化ツールは,生産者圃場ごとの根こぶ病菌密度・診断結果類型(菌密度レベル)・土壌pH・診断結果・対処方法,等の項目を営農支援プラットフォーム「あい作」上のマップで確認できる.見える化ツールは,生産者である部会員とJAの営農指導員が,情報を共有しながら,営農指導員による根こぶ病対策指導の下,対策を実施することが可能である.見える化ツールの導入により,生産者の60.9%が見える化ツールの情報と営農指導に基づいた対策実施を意識するようになった.その結果,部会全体の2年間において,薬剤購入量が33.6%減少,石灰資材購入量が41.2%増加,おとり植物種子購入量が591.3%増加し,ツールの導入効果が示唆された.また,圃場内における根こぶ病菌密度の水平分布についても実態を明らかにした.以上,菌密度レベルに応じた対策を圃場ごとに実施できる見える化ツールは,薬剤の過剰使用を抑え,持続可能な農業の実現に寄与できる強力な対策意思決定ツールとなり得る.

  • Mari Aoki, Ryo Sugiura
    2024 年 33 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    Dystocia among dairy cows results in economic losses. Such losses can be prevented, and the survival of newborn calves can be ensured, by predicting the degree of calving difficulty in cows. Although pelvic cavity measurements have been commonly used to predict calving difficulty, these are difficult to obtain because measurement requires considerable time and effort. Hence, a simpler and more practical alternative to pelvic cavity measurements must be developed. Here, we applied the deep learning algorithm of the convolutional pose machine (CPM), a model for estimating joint positions, to predict the degree of calving difficulty in Holstein dairy cows by estimating key points on the lower limbs and pelvis from images. Side and back view images were obtained. The image data were augmented for training and validation to determine the skeletal key points. The data were augmented to Training (n=189,125) and Validation (n=48,790) sets to learn the skeletal key points. A total of 23 key points related to the pelvic shape of the cattle were identified, and the percentage of correct key points was 0.89. Therefore, skeletal key points in cattle can be estimated by using CPM, and the pelvic skeleton recognition system developed here can be used to construct a system for estimating the degree of calving difficulty on the basis of images.

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