2016 年 7 巻 p. 59-85
本稿は,日本語教育実習のために作成したコースデザインをいかに学習者の情報を取り入れて調整できるかを検証したアクションリサーチである。筆者は2016年1月に行われた実習で,学習者のレベルに合ったコースデザインを作成することができなかった。この原因はニーズ調査で適切に学習者の言語能力を測れていなかったこと,シラバスデザインが学習者のニーズ以外の情報に基づいて作成された変更不可能なものであったことであった。これをうけて2016年3月に行われた実習では,学習者のニーズに合わせ柔軟に調整できるコースデザインを目指した。本稿ではこの実習のコースデザインが学習者のニーズにもとづいて調整できるものであったかを検証した。結果として,ニーズ調査の時点で現状の言語能力の把握が行えたことで計画の時点で学習者に合わせたシラバスの作成が可能になっていたことがわかった。また,シラバスデザインに余白を残しておくことでコース実施中に明らかになるニーズに合わせて調整できるシラバスの設計ができていたことがわかった。一方で,コース中に内容を調整したにも関わらず,学習者の言語能力にふさわしい課題を充分に与えられたとはいえないということがわかった。