抄録
本発表では1986年に導入されたドイモイ政策以後特に活発化している、出稼ぎという農民行動と農村の社会経済状況との関係を1998年から2001年にかけて行ったフィールドワークに基づいて示し、農村社会における出稼ぎの意味を検討した。同県内であっても社(行政村)によって出稼ぎ状況は多様であり、特に地元での農外収入の多少および農外収入源である副業形態が出稼ぎのあり方に影響を与えていた。また社によって優勢な職種や行き先があり、出稼ぎ者の農村内での属性や出稼ぎ先での生活様式、集団形成などにも特徴があった。このようにドイモイ後活発になっている紅河デルタの出稼ぎは、農民の個人的経済行動であるとともに、それぞれの農村の社会経済状況を反映しているといえよう。