日本地理学会発表要旨集
2004年度日本地理学会秋季学術大会
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函館市における人口移動と住宅立地
*沼田 尚也橋本 雄一
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p. 107

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抄録

1.はじめに 都市の構造の要素としては,住宅立地,工業,商業など様々なものがあげられる.特に住宅の立地に対して大きな影響があるが,そのような諸要素に対して,人口移動は都市間,都市内にかかわらず,大きな変動要因となる.それゆえに人口移動は都市構造の変容を考えるうえで一つの重要な要素となるといえる.人口移動において都市間人口移動は労働力移動,都市内人口移動は居住地選好の意味合いが強い.そのうち,本研究では都市内人口移動を主に扱う.地理学における都市内人口移動研究においては,実際の移動単位である世帯別の詳細な移動データを用いたものは少ない.また,その着地である住宅立地と人口移動を重ね合わせて分析することから都市構造の解明を試みる必要がある.そこで,本研究では,詳細な世帯別,男女別年齢別の人口移動データによる都市内人口移動の傾向と住宅立地とから,都市の構造変容を解明することを目的とする.2.研究方法 本研究は函館市を対象地域とする.研究方法は以下のとおりである.まず,函館市における町丁別の人口増減や転入出人口などの人口特性を概観する.次に,男女別年齢別の都市内人口移動,および実際の移動単位である世帯別の都市内移動パターンを明らかにする.その際,分析方法としては3相因子分析法を適用する.その後,移動の着地であり,人口移動における入れ物としての住宅について,その現在の立地状況,新規の住宅立地傾向,地価といった指標から明らかにする.最後に,それらをあわせ,郊外化や再開発を中心に函館市の都市構造の変容を考察する.使用したデータは,転入出,都市内人口移動については函館市から提供されたもので,主に2001年1月から2002年12月における函館市の転入,転出,転居に関する非集計データを使用した.このデータは世帯を単位とするが,年齢や性別といった詳細な世帯人員のデータが記されており,そこから個人別の移動もわかるデータである.有効ケース数は転入が9,281世帯,転出が10,073世帯,転居が10,582世帯である.なお,移動の発地,着地は市内ならば町丁別に示されている. なお,人口増減や住宅立地を図示する際の資料として,住民基本台帳を基にした函館市の『町丁別年齢別人口表』,『国勢調査報告』,『函館市における新規建築申請』を併用する.3.結果分析の結果,函館市における都市内人口移動と転入出人口,住宅立地の関係について下記のことが明らかになった.まず,転入人口は市の郊外地域と都心地域への転入が多くみられたが,際立った傾向としては大学の立地している町丁への就学によると考えられる転入が多くみられた.なお,転出についても,同じように就学が要因と考えられる転出が多くみられた.既存の住宅立地は郊外において一戸建住宅,都心部において集合住宅が多く,かつての都心部などでは長屋建住宅が多かった.新規の住宅は函館市の政策として,住宅の新規建築を誘導している,都心からみて市北部の郊外地区に一戸建,都心部に集合住宅の立地がみられた.次に,都市内人口移動に関しては,3相因子分析法の結果,個人別の移動分析においては,性別年齢階級については6因子(表1),発地区については14因子が,着地区についても14因子が抽出された.その結果を例示したものが図1になる.そして,これらの結果によると20_から_30代の年齢層および0_から_14歳の年齢層による,新規一戸建住宅の立地する郊外への移動が明らかとなった.しかしながら,その結果と世帯別の移動分析を組み合わせると,同じ年齢層であってもその世帯規模の別,つまり移動契機の別により,その移動パターンに大きな違いがある.例えば,性別年齢階級別の個人別の移動分析のみでは,20代の移動は単身であっても複数の世帯人員の要る移動であっても同じようにみなされてしまう.このため,実際の移動単位である世帯という要素を入れて,さらに分析を進める必要がある.

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© 2004 公益社団法人 日本地理学会
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