抄録
研究課題これまでの通勤研究は、任意の社会・経済的事象を素材に通勤流動を捉えたもの、あるいは通勤流動そのものを素材に任意の社会・経済的事象を考察したものの二つに大きく分けることができるが、それらの多くは交通手段への言及が少なく、特にP&R・K&R等の駅端末交通の研究事例は少ない。P&R・・・車で駅まで移動し駅周辺の駐車場に駐車後、鉄道を利用する移動方法K&R・・・は家族等が運転する車で駅まで同乗し、鉄道を利用する移動方法そこで、本研究では宮城県仙台市を中心にした仙台都市圏を対象地域に取り上げ、通勤流動における端末交通特にP&R・K&Rに焦点を当て、その発生メカニズムについて考察する。研究目的本研究では、パーソントリップデータの分析を踏まえた聞き取り調査及びアンケート調査の結果から、仙台都市圏の通勤流動における駅端末交通の発生、特にP&R・K&Rの選択に関わるメカニズムを考察する事を目的とする。研究方法 まずフィールドワークならびに2002年度に行われたパーソントリップデータ(以下PTデータ)等の分析から、居住地分布や公共交通の展開について考察する(_II_章)。次にPTデータの駅端末交通の集計から都市圏内の駅端末交通の利用状況に触れ、各端末交通の利用者数から駅の類型化を行う(_III_章)。続いて各類型から事例駅を選定し、各駅周辺の土地利用ならびにP&R・K&Rの展開についてフィールドワーク及びPTデータから分析する(_IV_章)。そして最後に都市圏の地域的特徴から各類型における駅端末交通の発生メカニズムならびにP&R・K&Rの選択に関わるメカニズムを考察する。まとめ本研究では、仙台都市圏の駅を3つのパターンに類型化しそれぞれの端末交通およびP&R・K&Rの選択メカニズムについて以下に考察した。徒歩卓越型「徒歩」と「二輪車」が端末交通として卓越する。その形成要因には「駅と居住地との近接」が挙げられ、加えて「駅周辺の駐車場台数」もそれらの発生に作用している。徒歩卓越型の駅の多くは駅と居住地とが近接しているため、自動車や路線バスなどを利用して移動する利用者数は少ない。このことが「徒歩」や「二輪車」といった移動距離の短い端末交通が卓越する要因と考えられる。徒歩卓越型の駅におけるP&R・K&Rの選択については、利用できる駅周辺の月極駐車場の台数が少ないためP&Rの発生は抑制され、駐車施設を必要としないK&Rが卓越する。公共交通卓越型「公共交通」と「自家用車」が端末交通として卓越する。それらの形成要因として、「駅と居住地との距離」、「駅周辺の駐車場台数」そして「高密な公共交通網の展開」等が大きく作用している。公共交通卓越型の多くの駅が立地している地区は、郊外核として機能しているため、住宅地と駅とを結ぶ路線バスの起終点にもなっている。そのため公共交通で通勤している駅利用者が多い。また、駅が郊外核に立地する性格から縁辺部から都心方向への移動の際、駅周辺部でP&R・K&Rが発生している。そのため、端末交通に占める自家用車の役割も大きい。公共交通卓越型の駅におけるP&R・K&Rの選択には、利用できる駅周辺の月極駐車場の台数が多いためP&Rの発生には好条件の地域である。また、公共交通卓越型の駅周辺部には、従業員用の駐車場を設置した就業地が多く分布している。そのためそれらを利用したK&Rの発生も多くみられる。そのため公共交通型の駅においてはP&R・K&Rの発生が共にみられる。自家用車卓越型「自家用車」のみが端末交通として卓越する。その形成要因として、「駅と居住地との距離」、「駅周辺の駐車場台数」そして「脆弱な公共交通網の展開」等が影響している。自家用車卓越型の駅の多くが、一日のバスの運行本数や路線数が都心部や郊外部に比べて極めて少ない地域に立地するため交通環境は自家用車に大きく依存しいている。そのため自家用車で通勤している駅利用者が多い。自家用車卓越型の駅におけるP&R・K&Rの選択には、利用できる駅周辺の月極駐車場の台数が多く、また駅利用者の世帯員の多くが自家用車を保有しているためP&Rの発生が卓越する。