日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会春季学術大会
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SAT,気圧計およびGPSを用いた気圧、気温、風向風速移動観測システムの開発
*中川 清隆渥美 裕史榊原 保志
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p. 14

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抄録

 自動車搭載パソコンで気圧計、超音波風速計SATおよび汎地球測位システムGPSを制御して、気圧、気温、および風向・風速を移動観測する新たなシステムを開発した。
 車軸に平行に固定された単管パイプ先端部にYUNG社製SAT Model-81000 をN方向と車の進行方向を一致させて垂直に取り付け、信号線を車内に引き込む。ルーフキャリアに設置した下面に多数の穴をあけた発泡スチロール箱中にビニールパイプの一方の先端を固定し、もう一方の先端を車内助手席に設置したVAISALA社製クラスA気圧計PTB220に繋ぐ。ルーフにEMPEX社製GPSアンテナを設置し、車内助手席に設置した同社製GPS受信機map21ex に繋ぐ。SATの出力は32Hz、その他の機器の出力は1Hzで、観測車搭載のノートパソコンにより読み取り、一切加工せずそのままHD内に保存する。
 観測後に実験室でHD内ファイルの記録を整理・解析する。時間・緯度・経度および観測車の移動方向・速度は、GPS出力を用いる。対車風ベクトルの観測車進行方向および側面方向成分を西風成分および南風成分に変換した後観測車の移動ベクトルを減じて対地風ベクトルとし、32Hz風ベクトルの1秒平均値を求める。YUNG-81000から出力される音速から求まる32Hz気温の1秒間平均値を求める。観測開始または終了地点等の標高既知地点の標高からの比高を気圧と気温の観測値から層厚公式により算出して標高を求める。標高、気圧および気温から海面更正気圧を求める。
 自動車搭載SATによる風向・風速の測定は、黒瀬ほか(2002)による検定観測の結果、風向誤差11°、風速誤差1.5m/sと結論づけられている。観測車のSAT直下にサーミスタ気温測定装置を設置し、平成16年11月14日13時_から_14時に信州大学教育学部から戸隠神社中社の間で時間同期させて実施した比較観測の結果、約10℃の温度範囲において決定係数は0.97を上回っており、SAT気温は移動観測に利用できると判断された。平成16年10月28日_から_30日に長野地方気象台玄関前における本システムによる測定値から求めた海面更正気圧を同気象台の1分値との比較したところ、気圧と気温の測定誤差のほかに、本研究の海面更正法が仮温度を使用していないことに起因する多少の過大系統誤差が存在するが、標高を高精度で決定できれば海面更正気圧の移動観測も非現実的ではないことが示唆された。

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