日本地理学会発表要旨集
2005年度日本地理学会春季学術大会
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温帯低気圧異常発達の気圧場解析
大和田 道雄*中川 由雅櫻井 麻理
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p. 192

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抄録

_I_ 研究目的
近年,大型台風の襲来や温帯低気圧の異常発達による風害が相次いでいる。特に,2004年は,過去に例を見ない程の台風が襲来し,土砂災害,崖崩れ,洪水被害のみならず果樹等の農作物にまで影響を及ぼした。さらに,春・秋季には温帯低気圧が異常発達し,風害による被害が相次いだが,運搬船や漁船等への影響も多大であった。そこで,本研究は最近のこのような温帯低気圧の異常発達の原因を探り,今後の防災の予測に役立てようとするものである。
_II_ 対象事例および解析方法
 対象としたのは2004年3月18日,4月21日,および11月27日に日本列島に影響を与えた温帯低気圧である。これらの温帯低気圧は,ほぼ大型台風並に発達して日本列島を通過したため,20_から_30m/s異常の突風が吹き荒れた。特に,11月27日に通過した低気圧の中心気圧は952hPaにまで発達し,東北・北海道では最大瞬間風速30m/s以上の風が吹き,特に北海道の浦河では42.7m/sを記録した。
そこで,まず地上気圧配置の動きから,低気圧の発生地域を特定し,低気圧の動きに伴う移動経路と発達過程を確認した。また,これと並行してNCEP/NCARの再解析データから,亜熱帯ジェット気流の軸として200hPa等圧面高度場,および寒帯前線ジェット気流の軸として500hPa等圧面高度場解析を行い,両ジェット気流のトラフとリッジの動き,さらに,気温と比湿の鉛直プロファイルを作成した。
_III_ 結 果
 特に異常発達した2004年11月27日の低気圧は,11月26日18時の段階では日本海にあって,中心気圧は988hpaであった。この時,樺太北部にも低気圧(994hPa)が発生している。しかし,翌日の27日にはこの2つの低気圧が合体して異常発達した。これは,北太平洋高気圧が例年に無く勢力が強かったため,亜熱帯ジェット気流が北上して日本海にトラフを形成し,日本付近でリッジとなって寒帯前線ジェット気流と接したため,北側の低気圧からの極寒気の流入と南側の低気圧による暖湿流による低気圧性擾乱が強まったことが考えられる。

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© 2005 公益社団法人 日本地理学会
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