抄録
1.はじめに沖積層の堆積過程を復元するためには,詳細なコアの分析に加えて,沖積層の三次元構造を明らかにし,それらを総合的に検討する必要がある.本発表では,既存ボーリング柱状図を整理し,ボーリングコアの分析結果と総合して濃尾平野沖積層の三次元構造を明らかにし,本平野の埋積過程を検討する. 2.方法平野全体を1kmメッシュに区切り,各メッシュから1本ずつ,最も高い精度で記載されている既存ボーリング柱状図を計510本選択し,堆積ユニットの境界面高度を識別してGISソフトTNTmipsに入力し,堆積ユニットの層厚や境界面の深度の分布図を作成した.図1には沖積層基底,LS上面,MM上面,US上面のブロックダイアグラムを示した. 3.結果および考察1.堆積ユニットLS(下部砂層)は沖積層基底面の起伏を埋めて堆積している.上面は一様に養老山地に向かって傾斜していて,養老断層の活動に伴う西へ傾斜する累積変位をうけている可能性を示唆する.2.堆積ユニットMM(中部泥層)は堆積ユニットLS上面の傾斜を埋めるように堆積した内湾性の泥層で,養老断層に向かって層厚を増している.MMの堆積期間中に断層活動がくりかえされ,その結果生じてきた変位を埋めながら堆積した可能性が極めて高い.3.堆積ユニットUS(上部砂層)は平野北側から前進しながら堆積したデルタフロント堆積物で,厚い部分が帯状に分布し,この部分では下面高度が低い.この帯状部分は河川流軸すなわちデルタの前進軸に対応する可能性が高い.4.堆積ユニットSS(周辺部砂層)は,MMが存在しないためにLSとUS,TSが区別できない周辺部で,それらを一括してひとつの堆積ユニットを定義した.本ユニットは,MM,US,TS/TM同時異相的に堆積したと考えられる.5.堆積ユニットTM/TS(最上部泥層/砂層)は,US上面の起伏を埋めながら堆積した洪水・氾濫堆積物である.US上面は西側の断層に向かって傾斜していて,その傾斜は北側ほど大きい.このことは堆積年代の古い平野北部ほど養老断層の活動に伴う変位が累積していることを示唆する.