日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会春季学術大会
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対流圏上層の擾乱が日本列島東海上の順圧的高気圧の存在下で発生した局地豪雨に与える影響について
*石川 由紀
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p. 145

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抄録
1 研究目的 秋季に発生する局地豪雨は,秋雨前線と台風に寄与するところが大きいが,秋雨前線の停滞位置,および台風の進路などは,対流圏上層を吹走する亜熱帯ジェット気流によって決定される。亜熱帯ジェット気流は,豪雨発生時には日本列島の東の海上に形成される順圧的な高気圧の存在により日本列島の西側でトラフ,東側でリッジを形成する(図1)ことを報告した。 そこで,本研究は,台風と秋雨前線の影響で発生すると考えられている秋季の局地豪雨に関して,上層の擾乱の影響も大きいことを考察しようとするものである。2 資料および解析方法 解析に用いた資料は,アメダスの雨量データ,およびNCEP/NCARの再解析Dailyデータである。対象とした事例は,顕著な豪雨災害として報告されている9事例である(表1)。 解析は,各事例の最も降雨量が多かった地点において最も激しく降雨が観測された時間帯の200hPa面における相対渦度0のコンターの時間変化を調べ,それらと雨の降り方,中層の乾燥域,下層の水蒸気の分布などとの関係を考察した。3 結  果 台風の存在が無くて豪雨となった1989年の事例では,9月2日21時_から_4日3時と9月4日21時_から_6日3時までにおいて地上の天気図ではどちらも前線が列島上に停滞しているが(図2),200hPa面における渦度0のコンターの形には顕著な違いが見られた(図3)。 これらの違いは,2_から_3日の降雨が九州から中部地方の広い範囲で見られたのに対し,5_から_6日の降雨が中国四国地方から中部地方にかけての比較的狭い範囲でみられたことに関係すると推測される。
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© 2006 公益社団法人 日本地理学会
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