日本地理学会発表要旨集
2006年度日本地理学会春季学術大会
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お茶の水女子大学と地理
*田宮 兵衛
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p. 81

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抄録

0)現状:お茶の水女子大学の前身は東京女子高等師範学校であり、女学校の教員を養成した。現在、地理学教室は、文教育学部から大学院に至る教育組織を担当する。1)組織変更:1990年代中頃以降、常時変更されており、変更は現在も進行中である。2)研究教育上の特色、3)育成する人材像、4)-1教育方針については、「地理」36巻(1991)7号68-74、同44巻(1999)5号50-56が明らかにしているように何も無い。4)-2現行のカリキュラムは、前掲「地理」に示された開講科目数が、約半減している。この大幅削減は、最大瞬間教員数が9から4に減った人的配置の現実の反映である。5)自己点検制度、6)PRは無いに等しい。7)資格は中学・社会、高校・地歴の教員免許と社会調査士であり、測量士補資格は学科消滅と同時に無くなった。8)就職・進学先は、前掲「地理」と同様であるが、その意味は社会情勢を反映した変動をしている、ということである。すなわち、9)独自の就職支援活動は無い。10)教育研究上の課題は、上記のとおりである。以下はその根源を探る作業である。仮設(前提):初等中等教育における「地理教育」は必要、その教員養成も必要である。_丸1_初等中等教育の教科としての「地理」の内容は多様である。_丸1_’初等中等教育の教科は、試験科目となる。暗記「地理」の発生と、それを防ぐ努力が、系統化・複雑化→系統地理学、すなわち細分化である。_丸2_「地理教育」の細分化の下において、教員養成組織は、多様な情報を、養成する地理教員に与えることが要求される。_丸3_その場合、効率よい養成組織とは、多様なdiscipline(専門分野=出自学科)から養成者を構成することであり、discipline(規律)は無くても初等中等教育の地理教員養成は成立し、地理教員養成者を再生産した。_丸3_’現在、地理教員養成は大学で行われている。_丸4_幻想のdiscipline(規律)。「地図を使う」・「フィールドワークに基づく」・「自然_-_人間関係論」等があるが、その時点の地理学以外のdiscipline(専門分野)が、それらを論ずる段階まで発達していなかったという、単純な事実の反映に過ぎない。_丸5_このことは、discipline(規律)の無い地理学の存在が許されないことを意味するが、逆に地理教育の必要性を支持する。_丸6_他方、「地理学」という学問が存在し得ることも否定できていない。しかし、地理教員の養成と同格で、「地理学教育」は可能であろうか。可能とすれば、inter-disciplinarityの確立としての「地理学」であろうが、その教育は容易なことではないのである。

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