日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 710
会議情報

アメダス地点における気温の経年変化率と人口密度との関係
*藤部 文昭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録


【はじめに】
 気温の長期変化を評価する際,都市化の影響が問題になる。都市化の尺度としては市町村人口が簡便でよく使われるが,小さい町村が合併で大きな市の一部になっている例もあり,市町村人口は観測所の周囲の状態を必ずしも正確に反映しない。本研究では,気象官署やアメダス地点の周辺の人口密度を求め,それらと気温変化率との関係を調べた。
【資料と解析方法】
 1979年3月~2006年2月の27年間について,水平距離500m以上,高さ5m以上の移転がなかった561地点を対象にした。このうち気象官署は90地点である。
 人口については2000年国勢調査による約1km格子(緯度0.5', 経度0.75'ごと)のデータを使った。これに exp{-(r/R)2} の重みをかけて空間平均し (rは地点からの距離,R=3km),各地点の周囲の人口密度Pを求めた。なおR=1kmあるいはR=10kmとしても以下の結果に大きな違いはなかった。
【結果】
 P>1000人/km2の地域は国土全体の7%に過ぎないが,そこに気象官署の50%,アメダスの20%が立地しており,観測点の都市域への偏在が裏づけられる。その中には非都市地点と見なされがちな伏木(P=1043人/km2)や石垣島 (1026人/km2) も含まれる。
 図は各地点の年平均気温の上昇率とPの関係を示す。これらから,以下のことが分かる。
(1) 人口密度が最も小さい階級 (P<100人/km2)の昇温率は0.34℃/10年である。この値は,同時期の北半球の昇温率 (1976~2004年に0.287℃/10年) に近い。言い替えると,日本の非都市部の昇温率は北半球の昇温率よりもやや大きい程度である。
(2) Pが大きいほど気温上昇率は大きくなる。P=100~300人/km2の地点でも,P<100人/km2の地点に比べて上昇率が有意に大きく,小さい町村のデータも都市化に注意して利用すべきことが示唆される。
(3) 昇温率には地域差があり,北日本よりも西日本で大きい。西日本は北日本に比べて都市部の地点が多いため,全国のデータを単純に統計処理すると,都市化の影響が過大に評価される可能性がある。しかし,地域差を除いても人口密度と気温変化率との間には有意な関係がある。
(4) 日最低気温や平均気温は,人口密度が増すほど上昇率が大きくなるが,日最高気温の上昇率は人口密度への依存性が小さい。

Fullsize Image
著者関連情報
© 2007 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top