抄録
本発表は,地方中核都市郊外地域における地域コミュニティの存立状態に関する調査報告である.具体的には,香川県の中心都市高松市に隣接する三木町を事例地域として,その社会経済的特徴を把握した上で,居住者を主体とするコミュニティがどのような状態にあり,どのような課題を抱えているかを,地域的,空間的視点にたって明らかにし,今後のコミュニティのあり方を探ることを目的とする.特に,地域社会に普遍的に立地する公民館や公立小学校に注目し,これらの施設を核としたコミュニティに着目する.
三木町は,県都に隣接するという地理的条件と,平野部と山間部が町を南北に二分するという地形的な要因から都市的な特徴と農村的な特徴をあわせもち,平野部は新旧住民の混住地域となっている.高松都市圏の拡大のなかで最近まで人口増をみたが,現在は停滞状態にあり,人口の高齢化は他の市町と同様に進行中である.
このような状況下,自治会を中心とする町内の伝統的な住民組織はその活動が不活発になりつつある.その1つの要因は,若年・壮年層の自治会離れであり,もう1つの要因は,自治会連合会といった横断的な組織の不在にある.一方で,公民館や類似施設は十分に整備されており,またそれら施設を拠点とした住民の諸活動は活発化しつつあり,地域コミュニティの素地は存在する.地域に普遍的に立地する公立小学校も,総合学習に実施や児童の安全確保の面から地域社会との結びつきを強めようとしている.
他方,住民に対するアンケート調査において,「地域社会」の範囲として公立小学校の学区程度の広さを挙げた回答がある程度の割合を占めた.したがって,三木町においても,先進地域にみられるようなネットワーク型のより広範囲な地域コミュニティの育成が急がれる.